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三味線は本来口伝ですー身体に任せるということ

ある生徒さんの体験です。

そのAさんは、とても真面目でお稽古中も「間違えないように弾こう」「ちゃんと弾こう」「先生に注意されないようにしよう」「先生に言われたことは全部覚えて帰ろう」ということに意識を向けていました。

お稽古の時は、口を真一文字に結び、歯を食いしばって呼吸をとめ、身体全体が硬く緊張しています。

私はいつも、「まず、深呼吸して」「力を抜いて」とお話をしますが、
深呼吸した後に、「はい!がんばります!」とまた力を入れてしまいます。

真面目なことは悪いことではありませんが、呼吸が浅いと音は広がりません。
また「ただ楽譜を間違えないで弾く」では音楽ではなく「運動」になってしまいます。

そんなある日のお稽古の時。
そのAさんが調弦をしていると、いつになく柔らかく広がった「いい音」がしました。
※通常、「いい」「悪い」の判断はしませんがここではあえて「いい音」と表現します

そこで、私は「Aさん、今日いい音だね」と声を掛けました。
するとAさんは、すごくびっくりした顔をしました。

そして、その後いつも通りのお稽古を始めるといつもと感じが違うのです。
「頭であまり考えていな状態」なことが分かります。
また、音の一つ一つが私のところまで届いてくるのが分かります。

Aさんにそのことを伝えると、
「実は、最近仕事がすごく忙しくて、しかもプライベートでもいろいろ大変で
体力的にも精神的にも結構参ってる状態だったんです。だから、さっき先生に『今日、いい音だね』と言われた時に
全然、練習できてないのに何で?そんなわけないと思ったんです。でも、先生と一緒に弾いたらいつもと感じが違うんです。身体が勝手に動くという感覚が少しだけわかりました。」

とおっしゃいました。

そこで、私は
「なるほどね。疲れすぎてて身体に力も入らないし、頭でも何も考えられないんじゃない?
だから、身体がゆるんで自分の身体にも響くし、頭で余計なことを考えずにできたんだね」と答えました。

そして
「これはすごく大切な感覚だし、お稽古の本質の部分。
これは長くお稽古を続けたからといってわかる感覚でもないんだよね。
逆に子どもなんかは最初からこの感覚があったりするし。でもこの感覚が少しでもわかったというのは
今の大変な状況のおかげとも言えるね。ただ、今の状況は身体的にも精神的にも不健康な状態だから
この状態のままが続くのはいいとは言えない。
健康じゃないとお稽古も続かないし、演奏も浮き沈みが激しくなるしね。
だから、健康な状態でお稽古の時に今日の感覚に近づけるように意識するだけでも、今までのお稽古とは
違ってくるんじゃないかな。」と話しました。

そして、その日のお稽古はAさんの「自分自身に音」に近づいている感覚がありました。

これは、いつも言っていますが「自分のことはわからない」のです。
だから、Aさんも自分では今の時点ではよくわかっていないと思います。
そして、時間が経つと元に戻ります。しかし、完全に元に戻るわけではありません。

少しずつ「自分自身の音」に近づいています。

この瞬間が、私がお稽古をしていて本当に嬉しく思う瞬間です。
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by あかい紅葉  at 16:27 |  先生のひとりごと |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

三味線は口伝です その1

私の教室は、基本的に口伝で教えています。

口伝とは、先生の動きに合わせて真似ることで
身体に動きを覚えさせ、身につけていく手法です。

三味線は本来、口伝です。

口伝の妥当性は芸を習得した後にしかわかりません。
しかし、音楽は楽譜で学ぶものだという常識を学校の音楽の授業で学んでしまいます。
原則は良い師匠を見つけて「口伝で学ぶ」ことが大切です。

西洋式の方法は、楽譜を頭で覚えて身体に落とし込みます。
東洋式の方法は、身体に覚え込ませて頭で考えます。
身体に覚えさせるのは同じですが、習得プロセスが全く逆です。

学校教育が西洋式だからなのか、楽譜で覚えた方が楽という人が多いのも現実です。
しかしこの場合、楽譜にとらわれすぎてしまって、演奏中もメロディを感じるのではなく、
「次の音が何だったっけ?」
「間違えたらどうしよう」と考えてしまったり、舞台上で緊張のあまり楽譜が頭から飛んでしまい、
全然弾けなくなってしまう。
また、合奏時に他の人の音に気を取られて自分の音が分からなくなるといったことになりがちです。
身体から覚えていれば、頭で不安を感じたり、音が分からなくなってしまっても身体が勝手に動きます。
また一度覚えた曲を忘れにくいもの特徴です。

しかし、頭で覚えてしまうと、身体に任せられない人が多いのも事実です
(西洋式の方法でも、プロの演奏家はほとんどの人が楽譜を身体に落とし込む程の練習を重ねています)

頭と身体を一致させる一つの方法として、自分で楽譜を書くというお稽古も取り入れています。

ただ、初心者の場合、口伝が難しいという人もいます。

その場合は、まず楽譜から始めて三味線本体や三味線の音階、メロディ、リズムなどに
慣れてから、口伝に変えてみてください。

三味線は本来、口伝ということを忘れないで欲しいです。

by あかい紅葉  at 15:53 |  先生のひとりごと |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

動画を撮影しました

今日は、午後から動画の撮影。
着物で三味線を弾くと、洋服の時より音が身体によく響く。
洋服よりたくさん着てるのに、不思議。
帯が自然と重心を丹田にしてくれるのと、うまく身体を支えてくれているんだと感じる。
呼吸も感じやすい。
やっぱり三味線と着物は、相性がいいんだと思う。


by あかい紅葉  at 15:24 |  先生のひとりごと |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

7月24日の合同練習&ワーク

日曜日に「本当の盆踊り」というテーマでワークをしました。
身体を感じる、音を感じる、地に足をつける、大地を踏みならす、一体感を感じるなど、いろいろな要素があったわけですが、ひとりひとりが自分の変化を体験することができたようです。
中でも興味深かったのは、1人が三味線を弾くのに他のメンバーが身体を支えてあげたところ、今までその人からは聞いた事のない力強い音が出た事です。その音は力強いといっても鋭い音ではなく、芯の強い音という印象でした。
本人が一番驚いていましたが、その場にいた全員が驚いてしまいました。その変化を共有できたことも大切な体験になりました。
三味線は本当に面白いと改めて実感するワークでした。
by あかい紅葉  at 09:36 |  先生のひとりごと |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

蜷川幸雄氏の訃報について


今年の2月まで上演されていた舞台「元禄港唄」で、三味線が使われており、
その三味線や付属品の手配などでお手伝いさせていただきました。

その舞台の演出が蜷川幸雄氏でした。

そして、「元禄港唄」を見た時、とても感銘を受けました。
今でもいろんなシーンが鮮やかによみがえってきます。
特に、市川猿之助さん演じる「糸栄」が三味線を弾くシーン、
子連れの参拝者のシーンなどは、心揺さぶられるものがありました。

そして、その舞台にほんの少しだけですが、関われたことがとても光栄に思っております。

心よりご冥福をお祈りいたします。

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by あかい紅葉  at 15:20 |  先生のひとりごと |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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あかい紅葉

Author:あかい紅葉
30年の三味線や唄の経験を通じ、多くの生徒さんを指導する中でいろんな気づきがありました。その内容を少しでも共有できればと考えています。
また、地域のイベントの出演情報なども更新していきます。

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